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【2016年に読んだ本】

2016年に読んだ本は20冊でした。そのうち1冊、夏目漱石の『こころ』だけ、複数回目の読了です。改めて読んでみても、本当に登場人物が全員嫌いだなと思いました。

また、印象に残った本No.1は、『東日本大震災 警察官救援記録 あなたへ』。読みながら泣きすぎてコーヒーを吹くという、人生で初めての経験をしました。人生で最も泣いた本トップ3にランクインです。ちなみに他2冊は『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』(リリー・フランキー)と、『わたしが・棄てた・女』(遠藤周作)。

少ないけど、興味深い本や楽しい本が盛りだくさんで充実していたかなと思います。
ぼんやりと心に残った順に並べます。

--------心の栄養になったゾーン
『異邦人』カミュ
『嗤う伊右衛門』京極夏彦
『東日本大震災 警察官救援記録 あなたへ』
『こころ』夏目漱石
『ゲゲゲのゲーテ』水木しげる
『人生をいじくりまわしてはいけない』水木しげる
『現代語古事記』竹田 恒泰←竹田氏の解説に、やべー奴感が漂っていてファンキーでした
--------楽しかったゾーン
『聖なる怪物』ドナルド・E・ウェストレイク
『あの日』小保方晴子
『事件現場清掃人が行く』
『まんまごと』『しゃばけ』『ぬしさまへ』畠中恵
『百鬼解読』京極夏彦ほか
『遠野物語』柳田國男
『カツオが磯野家を片付ける日』
--------読まなくてよかったゾーン
『包帯クラブ』天童荒太←これを読むには年を取り過ぎた
『紙婚式』山本文緒
『死にたい老人』木谷 恭介
# by usedpeople | 2016-12-31 21:17 | 本。

『ゲゲゲのゲーテ』by 水木しげる

愛情とパワーを感じる1冊。だけど、ゲーテの言葉から感銘を受けるというよりも、ゲーテを語る水木しげるから感銘を受ける本だった。

これはゲーテと私との相性なのではなく、ただ単に私が「ゲーテに心動かされるには長生きしすぎている」ってことなのだと思う。『若きウェルテルの悩み』にじたばたさせられた10代のころの私は、もう帰ってこないのよ……。

水木しげるもゲーテを読んだのは20歳のころだったというし、その後繰り返し読むときにも、きっと過去の自分をゲーテの言葉の中に見つけていたのではないかと思えた。過去の自分との会話の中で、新しい発見があったり、励まされたりしたのではなかと。

改めて若いうちにたくさんの本を読んでおくことの大切さを、実感させられた1冊だった。

高校時代、テレビをまったく見なくて本を1日に何冊も読んでいるという同級生がいて、よく本をお勧めしてくれた。振り返ってみるとなんとも絶妙なお勧め具合だったと、改めて感謝したくなる。

『若きウェルテルの悩み』も『車輪の下』も、あいつがいなかったら読んでいないだろうし。
# by usedpeople | 2016-04-24 20:29 | 本。

「東日本大震災 警察官救援記録 あなたへ。」

東日本大震災で救援にあたった警察官の記録をまとめた1冊。

文章のプロではない人が書いた、
淡々とした事実の記録と隠しきれなかった思いが
短い文章にまとめられている。

当時の混乱や困惑、そしてその場で踏みとどまる人々の強さが
ストレートに伝わってきて、
1編1編ゆっくりと読み、続けて読むことができなかった。

途中で読むのが辛くて冷蔵庫に冷えていてもらった期間もあり、
結局最初に開いてから読み終わるまでにかかったのは実に2年。

そういえば最初に軽い気持ちで
「目指したこともある千葉県警から読んでみよう」と思い、
いきなり号泣して飲んでいたコーヒーを噴き出したっけな。

「あとがきに代えて」に掲載されている
11歳が書いた詩も、泣けた。

これは本の形をした催涙弾なんだと思う。

読んでよかった。
このまま本棚の肥やしにするにはもったいないので、
誰かにこの催涙弾を託したいと思っている。
# by usedpeople | 2016-04-02 19:43 | 本。

『あの日』小保方晴子

前半にかなりのページを割いている、「学生時代の実験について」が難解で退屈で心が折れかけましたが、この部分を乗り越えたら、一気に読了してしまいました。

小保方さんの主張はこんな感じです。

・小保方さんは驚くような天才というわけではなく、マウスの口の中から細胞を切り取って増殖させる職人技にたけている人で、そもそもSTAP細胞の発表の時にも表に立つべきではなかった

・STAP細胞を作る「コツ」「レシピ」を持っているのは若山先生で、問題が発覚した時にそれを若山先生がしらばっくれ続けたから再複製ができなかった

・重要個所を取り仕切ったのは若山先生

・若山先生が細胞を盗んだ

・若山先生がマスコミに情報をリークした

・若山先生が情報を差し替えたり、理研に隠れてこそこそと小保方さんを陥れた

・理研も初めは若山先生を信じていたけど、途中から信じてない

・理研も早稲田大学も問題を大きくしないために私を切り捨てたなどなど……

読み終わって思ったのは、まだまだこの問題は現在進行形なのだなということ。これから長い年月をかけて、真実が明らかになっていくのか、埋もれてしまうのかが楽しみになりました。

内容で克明に描かれていたのは、マスコミに追われた時の恐怖心。スティーブン・キングばりの描写で当時の恐怖が伝わってきました。正直かなり同情してしまい、毎日新聞とNHKが嫌いになっています。

また、笹山先生の自殺については、駆け足ぎみに書かれていて、それまで詳細に書かれていた内容も急にぼやけていて、きっとまだ小保方さんの中で気持ちの整理がついていないのだなとも感じました。

最後の最後は「科学者として終わった」、「今でも研究をしている夢を見る」と書かれています。小保方さんは9年間も研究をした人だし、努力家なので、このまま廃れずにダークサイドに落ちてもらい、マッド・サイエンティストとして自分を陥れた科学界に復讐をする……小説を書いてほしいと思います。

ちなみにブックオフにて500円で売れました(元値は1500円)。
# by usedpeople | 2016-03-02 19:22 | 本。

『あなたへ』(12)

愛した人が恋しいのか
愛された記憶が恋しいのか


『あなたへ』(12)_e0027977_17522694.jpg


悲しいことが起こったとき、
上手に悲しむことは大切で、
悲しさに居場所を作ってしまうと、
悲しさを手放せなくなってしまう。

悲しさも傷口と一緒で
勝手に癒えていくけれど、
深ければ深いほど、
そこに傷があった事実だけは忘れない。

人は人にすがるように生きていて
主人公が旅の中で様々な人と会うたびに、
形は違っていても、
みんなひとりが苦手なのだと気づかされていくような
とても辛い映画に思えた。

古幡監督作品はいつも、映画を通して自分自身と
話しているような感覚を覚えさせられる。
恐らく次に見たときには、違う感想を持つような気がする。
# by usedpeople | 2014-11-16 17:45 | 日本映画